ブロウチェク氏の旅行 国民劇場

ブロウチェク氏の旅行

 

作曲:レオシュ・ヤナーチェク

台本:ヴィクトル・ディク、フランティシェク・ゲルネル&フランティシェク・セラフィーン・プロハースカ、作曲者、他

 

あらすじ

 

時と所:第1部→1888年・プラハ及び月世界、第2部→1420年・プラハ

 

第1部:「ブロウチェク氏の月への旅行」

第1幕

第1場:居酒屋ヴィカールカ亭前の小路

聖ヴィート大聖堂の堂守の娘マーリンカは、恋人のマザルがブロウチェク家の家政婦ファンチと踊っていたと言って怒り、「それなら私はブロウチェク氏と結婚するわ!」と叫ぶ。居酒屋から飛び出したマーリンカを追って出たマザルは、全く取り合わずに笑いながら彼女を抱き締めキスをするが、近くの家から出て来たマーリンカの父が二人を引き離し、マーリンカはその場から立ち去る。堂守である父は、娘が売れない画家のマザルと付き合うことに反対だった。その時、芸術家たちが陽気に歌う居酒屋ヴィカールカ亭の中から、ブロウチェクが出て来る。ブロウチェクはかなり酔っていたが、家主である彼はマザルを見るなり滞っている家賃の支払いを迫った。しかしマザルは酔って足元のおぼつかないブロウチェクを「貴方は月からやって来たのですか?」と軽くあしらうと、店の中へと姿を消した。一人残されたブロウチェクがふらふらと歩いていると、「誰も私とは結婚してくれない」と嘆く傷心のマーリンカと出会う。「それでは私としましょうか?」とブロウチェクが調子よく言うと、マーリンカだけでなく父親の堂守まで出て来て「嫁にもらってくれるのですか?」と言う。するとブロウチェクは「月の上でなら…」と呟き、再びふらふらと歩き出した。マーリンカは父親と一緒に一度は家に戻るが、すぐに恋人のマザルがやって来て窓からそっと甘い言葉を囁くので、彼女はこっそりと家を抜け出し二人で夜の闇に消えた。
一方のブロウチェクは、酔ったまま古城の方へと歩いていた。そこへ居酒屋のボーイがやって来て、ブロウチェクの忘れたソーセージを渡す。ブロウチェクはそのソーセージを持って古城の階段を上り始めるが、いつしか彼の体は浮き上がり、月へ向かって飛んでいた。

第2場:月の世界

目を覚ましたブロウチェクの目の前に、ペガサスに乗ったマザルがやって来た。後方には鶏の足の上に建つ城が見える。しかし名前を呼んでもマザルは答えず、自分は月の詩人で青空の化身だと言う。そして自分の所有する家の自慢や女性の話など、俗っぽい話しかしないブロウチェクに、青空の化身は「もっと愛や美などの神々しい話はできないのか」と溜息を吐いた。そこへ堂守に似た月森の化身と、娘のマーリンカに似たエテレア姫が現れた。エテレア姫は侍女たちと楽しそうにワルツを歌っている。月森の化身はブロウチェクの姿に気付くと「珍しいお客の正体が何なのか、文献に載っているかもしれない」と言い、城へ本を探しに戻った。エテレアを愛している青空の化身は、彼女を賛美し愛を語ると、ブロウチェクにも跪くよう促した。しかしブロウチェクが気軽にエテレアに話しかけるので、反ってそれが彼女の気持ちを捉え、エテレアはすっかりブロウチェクを気に入ってしまった。するとエテレアは青空の化身が乗って来たペガサスにブロウチェクを乗せると、二人で何処かへ飛んで行ってしまう。絶望した青空の化身は、本を片手に戻って来た月森の化身と共に、ただ狂ったように笑うしかなかった。

 

第2幕:芸術の殿堂(月の世界)

ペガサスに乗ったブロウチェクとエテレア姫は、星の形をした芸術の殿堂に降り立った。殿堂の主である魔光大王は、ヴィカールカ亭の主人ヴュルフルにそっくりで、「愛し合う二人を救ってください!」と言うエテレアの言葉に、温かく二人を迎え入れた。始めは見慣れぬ人物を恐れ隅に隠れていた月世界の芸術家たちも、次第に出て来てブロウチェクを歓迎する(皆それぞれにヴィカールカ亭に集まる芸術家たちに似ている)。詩人で雲の化身は詩を朗読し、作曲家で竪琴弾きは音楽家の仲間たちと演奏を披露してくれた。しかし芸術に興味のないブロウチェクはすぐに飽きてしまう。その上ヴィカールカ亭のボーイそっくりの神童が用意してくれた食事は匂いを嗅ぐだけ。しつこく嗅げと勧める神童に「自分の鼻はもう満足だ」と言うと、月世界では「鼻」という言葉は禁句なようで、皆不快な顔をして遠ざかる。好きでもないエテレア姫にもしつこく付きまとわれキスをされたが、彼女は父親の月森の化身がやって来て捕まえてくれた。画家である虹の化身が絵を見せ出した時、とうとう匂いだけの食事に満足できないブロウチェクは、顔をハンカチで隠しながら持っていたソーセージをかじり出した。すると皆は彼が絵を見て感動して泣いているのだと勘違い。しかしブロウチェクが「肉」を食べていると分かると、その醜い行為に皆卒倒してしまった。そこへ父親から逃れて来たエテレアがやって来て、再びブロウチェクにつきまとうので、ブロウチェクはペガサスに飛び乗るとさっさとその場から逃げ出した。月世界の音楽家たちが祝福の音楽で芸術家たちの意識を取り戻させ、皆は曲に合わせて行進する。やがて辺りに霧が立ち籠め、場面は元の地上の居酒屋に戻る。客たちが帰る中、古城の方から店のボーイがやって来て「ブロウチェクさんが木の箱に入れられて運ばれて来る!」と言った。マーリンカとマザルが愛の歌を歌う中幕となる。

 

第2部:ブロウチェク氏の15世紀への旅行

第1幕:プラハの旧市街広場

今夜もブロウチェク氏は居酒屋ヴィカールカ亭で酔っ払い、飲み仲間たちと店を出た。ところが彼は一人道に迷って、古い地下の宝物庫に落ちてしまう。そこは国王ヴァーツラフ4世の宝物庫で、城からヴァルタヴァ河まで地下で繋がっていた。ブロウチェクは必死で出口を探し漸く外に出られるが、入れ違いにこのオペラの原作者スヴァトプルク・チェフの幻影が現れ、愛国の詩をうたい消えて行った。
無事に外へ出られたはずだったが、ブロウチェクが辺りを見回すとそこは中世プラハの広場だった。しかも時代は神聖ローマ帝国ジギスムントが統治する1420年。十字軍に包囲されたフス教徒たちが戦いを覚悟する、緊迫した空気が街中に張り詰めている状況だった。そんな中ブロウチェクは、ヴィカールカ亭の主人ヴュルフルにそっくりな役人に「ここはどこだ?」と声を掛けるが、ブロウチェクの話す現代の言葉は役人には伝わりにくく、結局「ジギスムントのスパイ」という疑いを掛けられ捕えられてしまう。ブロウチェクは助けを求めながら気絶する。目を覚ますと、目の前には堂守にそっくりな鐘つきのドムシークが立っていた。ドムシークが「何故正しいチェコ語が話せないのか」とブロウチェクに聞くので、ブロウチェクは咄嗟に「長い間外国に住んでいたので…」と嘘を吐く。人々は納得し、ブロウチェクはその晩ドムシークの家に泊めてもらえることになった。広場では民衆が「神の裁きの日が始まる! Zacina se den Pane!」と歌いながら、ティーン教会に向けて行進して行く。

 

第2幕

第1場:ドムシークの家

明け方から民衆の力強い歌声が街に響く。ドムシークは目を覚ましたブロウチェクにも戦の準備をさせるので、ブロウチェクは逃げ出したくなった。そこへ礼拝に行っていたドムシークの娘クンカ(マーリンカに似ている)が、客と共に帰って来た。クンカは「フス派の指導者であるジシュカ将軍の元、皆で結束を固めて来た」とドムシークに告げる。ドムシークはブロウチェクに髭面のヴァツェク、金細工師のミロスラフ、孔雀のヴォイタという三人の同志を紹介すると、士気を高めるために杯で乾杯した。学生たちもやって来て、戦いに向け心を一つにする。ドムシークはブロウチェクにも戦いに参加するよう言うが、ブロウチェクが頑なにこれを拒否するので皆は怒り出した。そこへクンカの恋人ペツシーク(マザルに似ている)が現れ「敵がヴァルタヴァ河を渡って攻めて来た!」と告げるので、一同は武器を持ち次々と飛び出して行く。外からはフス派の民衆の合唱「汝ら神の戦士にして、その法を守る者たちよ!(実際にこの時期に作られた有名な曲を、原曲通りに引用)」が聴こえている。結局ブロウチェクはクンカと、この家の家政婦ケドルタと共に家に残るが、居た堪れずに自らも武器を持って外に出て行くクンカを尻目に、ブロウチェクはさっさと自分の服に着替え部屋を後にする。家政婦のケドルタが皆の無事を必死で祈り続ける中、民衆は「チェコ国民よ、奮起して立ち上がれ!」と力強く歌い続ける。

第2場:プラハの旧市街広場

ジシュカ将軍率いるフス派教徒軍は勝利を収め、皆の祝福の中凱旋した。広場ではペツシークの先導で民衆が「子供たちよ、一緒に集おう! 」と勝利の歌を歌う。ブロウチェクは目立たないように身を隠していたが、二人のターボル派兵士(フス派の仲間)に見つかり「武器はどうした?」と尋ねられたので、必死に「剣は敵の馬に刺したまま」だの「ジシュカ将軍にも会った」だのと嘘を並べ立てた。ところがそれを聞いていたペツシークがすぐに「それは嘘だ!」と叫んだ。そこへクンカがやって来て、父ドムシークの戦死を嘆く歌を歌う。ペツシークは「そいつは敵の十字軍に、自分は味方だとドイツ語で言っていた!」と証言し、ブロウチェクは裏切り者として処刑されることになった。家政婦のケドルタはブロウチェクに向かい「地獄へ落ちるがいい!」と吐き捨てた。ブロウチェクは樽に入れられ火を点けられる。熱さに苦しむ中その火が段々と小さくなり…辺りは真っ暗になる。
ブロウチェクが目を開けると、そこは見慣れたヴィカールカ亭の中庭だった。小さく見える火は、店主ヴュルフルの持つローソクの火だ。ヴュルフルは酔って樽に嵌まったブロウチェクを助け出すと「今回は何処へ旅してらしたんですか?」と笑って聞いた。ブロウチェクは「十字軍と戦い、プラハ解放に一役買ったのだ!」と自分の武勇伝を語り出す。そしてそっと「これは内緒の話だよ」と付け加えた。(幕)

プログラムとキャスト

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MAY 2020

国民劇場 プラハ

国民劇場(こくみんげきじょう、チェコ語: Národní Divadlo)は、チェコの首都プラハにある劇場。チェコの歴史と芸術を代表する建築物である。

 

国民劇場は、音楽の盛んなチェコにおける最重要機関であり、チェコを代表する芸術家らによって創設、維持されてきた。この伝統により、チェコの言語、音楽、思想などが保存・発展してきたものである。

 

今日では、国民劇場はオペラ、バレエ、演劇を提供している。いずれも、著名なクラシックなどに限定せず、地域のものや現代のものも上演している。

 

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